性別不合(GI)

診療案内

はじめに

性同一性障害(Gender Identity Disorder, GID)とは、身体の性(また、それにより社会に割り当てられた性)と本人のジェンダー・アイデンティティー(心の性)が一致しない状態を示します。近年、このような状態は「疾患」というより「多様性」の一部として捉えられるようになり、GIDという用語ではなく、性別違和(Gender Dysphoria)や性別不合(Gender Incongruence)が使用されるようになってきています。GID学会も日本GI学会へ名称変更を発表しており、ここでは「性別不合(GI)」を用います。

GIは、トランス男性(身体的に女性であるが性自認が男性)とトランス女性(身体的に男性であるが性自認が女性)に大別されます。身体的性と性自認におけるギャップが生み出す苦痛や違和感の軽減を目的に、泌尿器科では主にトランス男性に対する男性ホルモン療法、トランス女性に対する性別適合手術の一部を担当しています。

ホルモン療法

当院ジェンダーセンターでの適応判定会議で承認されたトランス男性に対して月経停止、声の低音化、骨格の変化、筋肉量の増加などを目的としてホルモン療法を行います。ホルモン療法に伴う身体変化は、通常数ヶ月で現れ始め、2年を過ぎると効果は最大化するといわれています。一方で副作用としては、多血症、肝機能障害、高脂血症、高尿酸血症、ざ瘡などが起こり得ます。また、性ホルモンの補充量が十分でないと、更年期症状や骨粗鬆症のリスクが高まることも知られており、定期的なフォローアップが必要です。当科ではテストステロンエナント酸エステル125mg あるいは250mg の2~4週間毎の筋肉注射による投与を行っています。投与量に関しては患者様の身体的・社会的背景を考慮して相談のうえで決定しています。

ホルモン療法の適応は、もともと18歳以上とされていましたが、現在ガイドライン上15歳以上に引き下げられています。それよりも若年で二次性徴変化を避けたい患者様においては、ゴナドトロピン放出ホルモン製剤を用いて二次性徴抑制療法を施行する場合もあります。二次性徴抑制療法は①望まない性への身体変化を一時的、可逆的に抑制しておき診断のための時間を確保する②不可逆的な性的特徴が現れるのを防ぎ後のホルモン治療へつなげることが目的です。

おわりに

ジェンダー表現は多様であり、その生き方に応じて求められるものも異なります。画一的な治療に縛られるのではなく、変わりゆく社会の中で、個別化医療(personalized medicine)を意識し、多職種で連携しながら診療に取り組んでいくことが重要と考えています。

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